二人で旅する2リズム


2 RHYTHM

子どもと一緒にどこ行こう?大刀洗の景色に眠るものがたりを探して 後編

二人のお子さんを持つ柳さんが、堀尾さん親子と共に、大刀洗の風景に合う「ものがたり」を探します。
まずは、大刀洗の子育て支援施設を回って、ママさんを取り巻く環境を紹介。
その後は、広々とした公園で絵本の読み聞かせだったのですが、予定変更!
菜の花咲く原っぱで野遊びを楽しみました。
さて、後半は柳さんが気になっていた久留米絣のお店に潜入!
どんな「ものがたり」が待ち構えているのでしょうか?

案内する人

柳真子さん &
しゅんたろうくん &
そうしろうくん

小学校から大刀洗で育ち、現在は4歳のしゅんたろうくんと1歳のそうしろうくんのママとして子育中。プライベートでも絵本や詩の読み聞かせイベントを企画するなど、アクティブに活躍している。趣味は久留米絣の服作りで、取材当日も親子3人とも真子さんお手製の絣のズボンでおしゃれにコーディネート。

案内される人

堀尾真理さん &
まれくん &
ゆうくん

5歳になったばかりのまれくんと1歳のゆうくん兄弟のママであり、ライター、編集者、バレエ講師と、多彩な肩書きを持つ。福岡市内在住。子どもと大刀洗町で過ごすのは今回が初めて。柳さん家のしゅんたろうくんとそうしろうくんとは、年齢も構成も同じで、初対面にも関わらず、かなりの仲良しっぷりを発揮。

 

14:30

お次は、久留米絣の洋服作りが趣味という柳さんがずっと訪れたかった工房へ。
久留米絣の伝統技術を元に開発したオリジナル素材の「からくり®織」シリーズを素材に、スタイリッシュで機能的に進化させた商品ブランド「ロォーリング®」を展開しています。
オーナーの實藤さんにお話をお聞きしました。
次から次に飛び出すアイディアと、3分に一度は笑いが起きるユニークな語り口はこの日も絶好調!

實藤さん

いらっしゃい!
よう来たね!
あら、子どもさん同士仲良いね〜。

今日会ったばっかりなのに、子どもたちはもう仲良し。
キッズ達がお絵描きに夢中なうちに、實藤さんにご挨拶。
普段から久留米絣の服を作っているという柳さんはお聞きしたい事があったそうで。

柳さん

私、子ども向けの甚平を作りたいのですが、ハギレや布って売ってもらえるんですか?

實藤さん

もちろん!
原色がいいちゃっない。
この生地はもともと甚平用なんだよ。

柳さん・
堀尾さん

かわいい!!
こんな色もあるんですね!

ビビッドな黄色や青の木綿地は新鮮なイメージ。
襟の裏地にさりげなく使っている久留米絣のシャツもおしゃれ。
久留米絣の藍色を引き立ててくれます。

堀尾さん

久留米絣っていうくらいだから、久留米で作られていると思っていました。

實藤さん

久留米絣に使った藍染の原料の多くは、大刀洗の三川地区で栽培されて、染料の「すくも」に加工されていたのよ。
だから、大刀洗でも久留米絣が盛ん織られていたというわけ。

ほら、このハギレを触ってみて。
100年くらい前にうちのばあちゃんが織った布なんだけど、丈夫で全然切れないでしょう。

堀尾さん

本当だ!
薄いのに丈夫。
手触りもなめらかで気持ちいい!

柳さん

手仕事って感じでいいね!

實藤さん

やろ〜。
普通の絣は、経(たて)か緯(よこ)糸のどちらかで織るだけやけん、白と藍色の2色なんだけど、 久留米絣は経と緯を組み合わせて織るとよ。
だけん、白、藍色、中間色で表現できる。
そうすると鮮やかな柄になって、デザインの幅も広がるよね。
難しいし、手間もかなりかかるけどね。

柳さん

それで丈夫なんですね。
この黒い色も素敵!

實藤さん

それ、本当は藍色なんよ。
何回も染めると、どんどん色が黒に近づく。
しかも生地も丈夫になっていくとよ。
キレだけに切れないってね。

堀尾さん

ちょこちょこギャグが入ってる(笑)

實藤さん

ついつい入れてしまうとよ(笑)

實藤さん

そして、この技術をさらに工夫したのが、オリジナルのブランド『からくり®織』。
これはね、色の違う2本の糸を合わせて一本にして、その糸を使って編む。
ほら、それぞれの糸の色が交互に出て、点線みたいになるやろ。

柳さん

風合いがかわいいですね。
ちょっとグラデーションっぽくて優しい雰囲気。

實藤さん

久留米絣をもっと気軽に楽しんで欲しいと思って、3年かけて開発したとよ。
糸をしっかりとよらずに添わせるくらいにすると、空気を含んで温かくふんわりとした感触になる。
このKARAKURI Ⅲの生地は、蛍光物質なんかは使っていないから、子どもたちが舐めたとしても大丈夫!
洗うほど、いい風合いになるからね。
僕が被っているこのハンチングなんて、毎日洗濯機で洗って2年経つけど、新品よりずっと気持ちいいでしょう。

柳さん

逆にビンテージ感がある風合いになっている。
全然傷んでいませんね。

堀尾さん

肌に当たる部分がとても柔らかくて、フィット感もいい。

實藤さん

2年経ったこの状態のハンチングを売ってとも言われるよ(笑)

工房の中は、絣を使った洋服や小物などがズラリ。
中には、珍しいデザインの商品もあり、興味をそそります。
実は、そのアイデア商品こそが、ロォーリングさんの魅力の一つでもあるんですって。

柳さん

これは大判のポンチョ?

實藤さん

そうそう。
これは「ルターセ®ポンチョ」という商品なんやけど、3枚の色違いの布が重なってるんよ。
布の間から頭を出してかぶればポンチョになるし、ひざ掛けにも肩掛けにも使える。

柳さん

これだけ大きいと、授乳用ケープにも便利だね。

堀尾さん

これ、出産祝いにプレゼントしたら喜ばれそう。

實藤さん

さらに、このルターセを筒状にしたのが「ルチューブ」。
1列ごとに違う色の布を横につなげて、さらにそのつなぎ合わせた布の上と下を縫い合わせて筒状にしたストール。
これは輪っかがたくさんできるから、その空気の層がより温かくしてくれる。
しかも裏地がなく、縫い目も隠しているから、気分に合わせてアレンジできる。
最初は抱っこ紐に使えるように開発していたんだけど、男女ともに人気だよ。

堀尾さん

筒の部分にカイロ入れて使うと首筋が温まりますね。

柳さん

アイデアがすごい!
ほ、欲しい!

實藤さん

生地もいいだけじゃなくて、機能性がないと、作っても面白くないからね。

このパンフレットも、穴が空いてるやろ。
例えば、商品をこのパンフレットで包めば、この穴から生地が見える。面白いやろ。
社名が「ロォーリング」だけに、巻くというね。

柳さん

なるほど!
お店の名前の由来はこういう意味なんですか。

實藤さん

いいこと聞くね!
だけど由来はそれだけじゃないんよ。
「ロォーリング®」のロゴマークの左部分は、植物の発芽を表しとるんよ。
つまり自然という意味。中央はお母さんが子どもを守ってるイメージやね。
そして、ロゴマークとブランドネーム、会社名にも小さな○が付いてるやろ。
この小さい「O(オー)」は、お客さんとのご縁(=円)、製品製作に関わる地域スタッフの「輪」、丁寧なものづくりの日本製(=和、倭)を表してるんよ。
自然にも人の暮らしにも優しいブランド「ロォーリング®」のエコ商品を通して、豊かな暮らしのお手伝いができればと思ってね。

堀尾さん

なるほど、深いですね!
かっこいい!

柳さん

す、すみません、私、ルターセ買います!

思わず、その場でお買い上げした柳さん。
その気持ち、よく分かります。
實藤さんの明るくひょうきんな口調の中に見える絣への情熱。
まるで一心に遊ぶ子どもたちのようなキラキラとした眼差しが印象的でした。
さて、最後は柳さんが子どもの頃に遊んだ甲条地域をぶらりと歩いて帰ります。

 
14:30

柳さん

子どもの頃よく遊んだお稲荷さんがあるんですが、小さい鳥居があるんですよ。
寝そべってやっと通れるくらいに狭いの。

堀尾さん

ええ〜!
なんですかそれ!
気になる!

甲条稲荷神社
1590年に創建され、御祭神は志水権兵衛大明神とされている。久留米藩主が目を患った際にこの神社に祈願したところ眼病が治ったという伝説が。

柳さん

ここです!
昔はちょっと怖いような、神秘的な雰囲気だったんです。

堀尾さん

本当に小さい!
鳥居は膝下くらいですね。

狐さまの像や小さな鳥居に興味津々な子どもたち。
神様や妖怪が大好きな世代だけに、割とすんなり親しめたようです。

堀尾さん・柳さん

あ!
鳥居の上に登ったらいかんよ!
神様が怒るよ!
こんにちはって挨拶しなさい。

子どもたち

こんにちはぁ〜!

小さな手を合わせて、大きな声で社へご挨拶!こんなカワイイ訪問者なら、きっと神様も嬉しいはず。
心なしか、境内の神秘的な雰囲気も少しだけ和みました。

堀尾さん

この小さい鳥居、熊本の神社で見たような。
くぐると幸せになれるとか。

柳さん

そうなんだ。
なにか関係があるのかも。

堀尾さん

うんうん。
興味深いね。

柳さん

ここに祀られてる神様は、粟嶋大明神(あわしまだいみょうじん)で、別名“少彦名”という小人の神様なんだって。
もしかしたら、神様のサイズにあわせて鳥居が小さいのかもしれないね。

堀尾さん

なるほど、そうかも!

柳さん

子どものころ大好きでよく読んでいた佐藤さとるさんの『だれも知らない小さな国』って物語があるんだけど、その中に、コロボックルっていう小人たちが出てくるんよ。
コロボックルは、ここに祀られている少彦名の末裔だというお話が出てきて。
「小人と一緒に暮らしてみたいな〜」ってずっと憧れてたから、こんな近くに、少彦名を祀っているお社があって嬉しいな。

堀尾さん

すごいねえ、つながるねえ。

柳さん

この近くに「甲条神社」というところがあるから、そこにも行ってみようか。

次の「甲条神社」は徒歩3分の場所。
だけど、お地蔵さんに挨拶したり、妖怪(?)が後をついてきたり、
棒でチャンバラして遊んだり、子どもと歩くといろいろな遊びが生まれます。
寄り道もまた楽しいなんて、久しぶりに感じました。

※後日、「粟嶋大明神」を調べたところ、熊本県宇土市新開町にある神社と判りました。
境内には日本一小さいと言われる鳥居があるそうです。

 
14:30

柳さん

神社の前の小道、ジブリ映画に出てくる道みたいでしょ。

堀尾さん

本当だ!
トトロがいそう。 

子どもたち

こんにちはぁ〜!
お邪魔しま〜す!

堀尾さん

あ、見てみて、お社の天井に絵が描いてるよ。
何を描いてるかは見えないね〜。

まれくん

昔の人が描いたと?

柳さん

そうそう、昔の人は村を守ってくれる神社を大事にしたんだよ。

甲条神社
大日孁尊(おおひるめむちのみこと)大己貴命(おおなむちのみこと) など5柱を祀る。境内一帯から縄文〜弥生時代の 甕棺墓などが発見された事も。出土した副葬品にはガラス製の小玉や碧玉製の管玉など珍しいものもあったそう。

仲よくお参りする親子の背中を、夕日が照らし出します。
かつてこの境内で遊んだ子どもが親になり、また子どもを連れて訪れる。
神様もそんな親子の姿を嬉しく見守っているのかもしれません。
ふとそんなストーリーが心に浮かびました。

さて、行き先知らずの旅もいよいよ終わりに。
まるで昔からの親友のように意気投合していたしゅんたろうくんとまれくんのお兄ちゃんコンビもお別れです。
たくさん遊んで疲れたけれど、まだまだ一緒にいたいと半泣きの二人。
そこはグッとこらえて、男同士の固い握手を交わします。
絶対にまた会おうねと。
地域と家族、親と子、そして小さな友情のストーリー。
さまざまな結末は、きっと次のお話につながっています。
日常の中には、こんな素敵な物語が隠されていると、小さなかいじゅうたちに教えてもらった1日でした。

大刀洗町立図書館

大刀洗町役場横ドリームセンター内に4月30日にリニューアルオープン。同施設内に「DREAM CAFE」もオープン。

住  所 福岡県三井郡大刀洗町冨多819
電話番号 0942-41-6111
営業時間 10:00~18:00、木曜〜19:00
休み 毎週月曜

子育て支援センター ちゃお

親子の遊び場のほか、
子育て相談やサークルの育成などママをサポート。

住  所 福岡県三井郡大刀洗町冨多819
電話番号 0942-77-5019
開所時間 9:00~15:00、子育て相談9:00〜17:00
休み 土曜・日曜

下高橋官衙遺跡

奈良時代の郡衙(郡役所)跡と考えられる遺跡。
現在は公園として利用されている。

住  所 福岡県三井郡大刀洗町大字下高橋・大字鵜木

ロォーリング

創業1960年、久留米絣をアレンジした
ファッションアイテムを制作、販売。

住  所 福岡県三井郡大刀洗町大字三川550-3
電話番号 0942-77-3297
営業時間 8:00~18:00
休み 年末年始

甲条稲荷神社

住  所 福岡県三井郡大刀洗町甲条1022

甲条神社

住  所 福岡県三井郡大刀洗町甲条944

子どもと一緒にどこ行こう?大刀洗の景色に眠るものがたりを探して前編へ