藍染作家として活躍する平田仁美さんの原点ともいえる筑後平野の夕日。
その夕暮れを待つ間、思い出の場所をテクテク散歩。
荘厳な西洋建築やワクワクが隠れた路地裏、人情味あふれる個人商店を満喫していると、そろそろ夕暮れの時間。
地平線の向こうに夕暮れは見えるのか。
そして、気になる藍染工房にも潜入!
案内する人
平田 仁美さん
大刀洗町出身。東京の服飾専門学校で服作りを学び在学中に学校とは別に趣味で藍染めを学ぶ。2010年に藍染作家としての活動をスタート。故郷である大刀洗町に戻り、洋服やストールなどの服飾を中心に作品を制作。2012年自宅にて「airu工房」を設立。
個展や作品情報はフェイスブックへ
https://www.facebook.com/hitomi.hirata.127
案内される人
編集部 ソガ
大刀洗町には数回訪れたことがあるものの、夕暮れを歩くのは初めて。普段から町をうろうろして変なものを見つけてくるノラ猫のような性格であり、趣味は寄り道といっても過言ではない。
夕焼けを見に、住宅街を抜けて田んぼの方へ。
小学校の横の道路には、福岡らしい道路表示が。
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ソガ
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あ、道路に「あぶなかばい」だって。
「止まれ」じゃないんですね。
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平田さん
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この辺りの通学路に2ヵ所ぐらいあるんですよ。
“止まれ”より立ち止まってくれそうですよね(笑)。
朝からぐずついた空模様。
徐々に雲が晴れてきたけれど、夕日には出会えるのか。
平田さんお気に入りの田んぼ脇の畦道で待機。
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ソガ
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え!ここに座るんですか!?
車にひかれません?
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平田さん
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大丈夫!
ひかれる勢いで座ってますから(笑)
頭上には、ただただ空が広がるばかり。
そういえば、最近こんなにゆっくり空を眺めた事あったっけ?
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ソガ
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空が広〜い。
平野なので、遮るものが無いですね。
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平田さん
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仕事の合間によくここに来て空を眺めているんです。
季節によって、雲の形が違って。
ああ、イワシ雲だ、もう秋だなあとか。
冬場はあんなふうに雲が流れて光が射します。
夕日を待つ二人、突如現れるちびっ子ギャングに襲撃される一幕も
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子どもたち
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何しよると〜?
私たちも撮って〜!!
動画を撮っているところを囲まれるソガ!
軽くあしらう平田さん。
さすが元ガキ大将。
平田商店で買った駄菓子を配って、ようやく解放された様子。
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ソガ
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今も昔も子どもは元気だ〜。
平田さんもよくこの辺で遊んでいたんですか?
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平田さん
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田んぼで遊んでましたね。
あそこに見えるお墓とかで。
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ソガ
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墓(笑)なんかシュールですね。
あ!
来ましたね〜!
ほのかにオレンジ色に染まった雲の隙間から、夕日が顔を覗かせて。
幻想的な光景にしばし見とれる二人
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ソガ
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光の感じが「降臨」って感じ。
こういう感覚って、藍染に生かしたりするんですか?
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平田さん
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そうですね。
積乱雲の感じを出したいな、とか思って作ることもありますよ。
この後、日がゆっくりと沈むと空が少しずつ暗くなっていく時の空の色が大好きで、群青というか、深い藍色になるんです。
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ソガ
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なるほどー。
グレーでもない青でもない
なんとも言えない味わいのある色ですね。
仁美さんの工房におじゃましてもいいですか?
どんなところで藍染をされているのかぜひ拝見したいです!
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平田さん
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いいですよ!
では行きましょう。
夕暮れを背に歩いてすぐの平田さんの工房へ。
たくさんの猫がお出迎えしてくれました。
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平田さん
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染料はこの130リットルのポリ容器の中に入ってます。
ここに、何度も浸けては水洗い、浸けては水洗いを繰り返して、思う色に仕上げていきます。
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ソガ
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すごく根気のいる作業ですね。
最初はちょっと黄色っぽいんだ。
水をたくさん使うんですね。
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平田さん
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そうなんです。
だから、井戸水が使えないと、普通の水道水ならエラいことに。
井戸水を使えることが、大刀洗で染めをやる理由のひとつかも。
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ソガ
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なるほどー。それは大きいかもしれないですね。
麻や綿、シルクやウールなど、染める生地はさまざま。
それぞれの風合いを活かして、染めた布から作品に仕上げます。
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ソガ
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どんな作品を作ることが多いですか?
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平田さん
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洋服やストールが主です。
もともとファッションが好きで、よく服を自作していましたので、今も楽しみながら作っています。デザインは、シンプルで着やすいデザインを心がけています。デイリーに使えるけど、いつもよりちょっといいもの。楽しい気分になれる服ですね。
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ソガ
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平田さんが今日着ていらっしゃるワンピースも作品ですよね。
ベーシックな形だけど、ギャザーがかわいい!
藍染をやっていてよかったと思ったことはありますか?
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平田さん
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着心地がいいと言ってもらえるとやりがいがあります。
あと、グラデーションがきれいと褒められた時も嬉しいです。
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ソガ
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確かにグラデーションがきれい。
こういった色彩感覚って、今村カトリック教会のステンドグラスや筑後平野の夕暮れで培われたセンスなんですね。
服を作る作業場は、シンプルな白一色。
壁には、昔使ったランドセルが飾られています。
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ソガ
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こちらはご実家なんですよね?
東京から大刀洗に戻ってきたのは何か理由があるんですか?
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平田さん
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もともと小、中、高校生の時から趣味で服作りをはじめたんです。
東京の服飾専門学校で服作りを専攻して。
だから、藍染めは学校の授業とは別に、趣味で学び始めたのが最初です。
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ソガ
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そうなんですねー。
縫製から染めまでご自分でされるってすごいなあ。
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平田さん
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そのあと、リメイクやお直しの仕事をしながら藍染めを続けてて。
独立して、実家に工房をかまえて藍染め作家として活動を始めたんです。
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ソガ
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独立のきっかけはなんだったんですか?
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平田さん
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仕事をしながらだと忙しいのもあって、なんだか気持ちに余裕がなくなってしまったんですね。
いつもなにかに追われているような感覚。
そんな中で実家に戻った時に、見慣れた大刀洗の景色を見ていたら、昔に戻った気がして。
ものづくりが大好きだった頃を思い出させてくれました。
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ソガ
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さっき眺めた夕暮れや町並み、故郷の景色で創作意欲を取り戻したと。
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平田さん
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そうなんです。
今も仕事の合間に夕日を眺めたりして、気持ちをリフレッシュしています。
いつかは夕日から夜にかけて、オレンジ色が藍色に変わる瞬間の色を出したい。
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ソガ
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それは楽しみですね!
今後の野望は?
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平田さん
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着てくださったお客さまが「私の染める藍色が好き」だと言われる服作り、そしてゆくゆくはお店を持ちたいです。
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ソガ
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素敵!
私もぜひ一度着てみたいです。
大刀洗の空色ワンピース。
平田さんの工房を後にして、最初の合流地点の今村カトリック教会への帰り道。
ちょうど日が落ちたすぐで、薄くオレンジのラインを引いた宵闇の空が満天の星空をまとって、目の前に広がっていた。
平田さんが染め上げたストールのような、どこかに温もりを秘めた深い藍色。
ひたむきに作品と向き合うアーティストの原動力は、とても身近なところにあった。
また一つ、大刀洗の魅力を教えてもらった気がする。
今村カトリック教会
八角形の塔が目印。
現役の教会として使われているので観覧の時はお静かに。
住 所 | 福岡県三井郡大刀洗町大字今707 |
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電話番号 | 0942-77-0101(大刀洗町役場地域振興課) |
営業時間 | 拝観/9:00〜17:00(日曜12:00〜17:00) |
中原鮮魚店
福岡県内各地の新鮮な魚介を販売。
店内で刺し身にさばいてくれる。
住 所 | 福岡県三井郡大刀洗町大字上高橋1554 - 3 |
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電話番号 | 0942-77-0223 |
平田商店
食料品や生鮮食品、惣菜など種類豊富にそろう。
角打もあり。
住 所 | 福岡県三井郡大刀洗町大字今807‐1 |
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電話番号 | 0942-77-0228 |