筑後平野の中に位置する大刀洗は、島オブ島と言われる九州の中では珍しく、広々とした空と地平線を見ることができる。
まさに「大地」を感じる場所。
特に、平野を真っ赤に染める夕焼けは、目を飛び越して心の奥に直接染み渡るような感動を与えてくれる。
この景色、毎日見られるなんて贅沢すぎる!
そんな大刀洗の夕焼けを見て育ったという藍染作家の平田仁美さんが今回の案内人。
夕暮れ〜宵闇までのマジックアワーを待ちながら、まずは平田さんオススメの今村カトリック教会や路地裏をぶらりと散策。
初めて来たのにどこか懐かしい、今村路地裏クエストのはじまりはじまり〜♪
案内する人
平田 仁美さん
大刀洗町出身。東京の服飾専門学校で服作りを学び在学中に学校とは別に趣味で藍染めを学ぶ。2010年に藍染作家としての活動をスタート。故郷である大刀洗町に戻り、洋服やストールなどの服飾を中心に作品を制作。2012年自宅にて「airu工房」を設立。
個展や作品情報はフェイスブックへ
https://www.facebook.com/hitomi.hirata.127
案内される人
編集部 ソガ
大刀洗町には数回訪れたことがあるものの、夕暮れを歩くのは初めて。普段から町をうろうろして変なものを見つけてくるノラ猫のような性格であり、趣味は寄り道といっても過言ではない。
住宅地の中に、ひときわ目立つ2本の塔。間近で見るとその堂々たる佇まいに圧倒される。
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レンガ建てのロマネスク式建築に彩りを添えるステンドグラス。
遠目で見ただけでもその美しさに驚く。
この「今村カトリック教会」が平田さんが指定した集合場所。
なんでも、ここには今の平田さんのルーツがあるそうで…。
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平田さん
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こんにちは〜!
どうです、すごいでしょ♪
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ソガ
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今日はよろしくお願いします!
それにしても、う、美しい
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平田さん
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そうでしょう!
この教会は100年以上前に建てられたそうです。
赤レンガの教会は珍しいんですって。
中に入ってみましょうか。
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ソガ
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うわあ、中に入ると思ったより天井が高くて、とても荘厳な雰囲気ですね。アーチ型の天井、柱の一本一本まで細かい細工が施されていて、素敵。
- 今村カトリック教会とは
- 1908年、キリスト教の布教に情熱を注いだ本田保神父により計画され、長崎で多くの教会建築を手がけた鉄川与助の設計で完成。2つの塔から成るロマネスク様式が特徴で、国の重要文化財にも指定されている。内部は撮影禁止。実際に目で見て確かめてみて。
平田さんの家はクリスチャン。
幼い時からこの教会に通っていたそうです。
今日も古くから平田さんを知る信者さんがいらして、建物の説明をしてくれました。
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信者さん
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あら、平田さんとこの娘さん。
見に来たと?
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平田さん
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はい。おひさしぶりです!
いつ来ても見事ですね。
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信者さん
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ここはね、1908年に、本田神父によって建てられました。柱の上に飾られている受難図はフランス製、柱は高良山の杉なんですよ。
この柱もユリの彫刻がきれいでしょう。
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平田さん
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本当に美しいですよね。
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信者さん
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そうそう、一度台風で割れたものもあるけど、創建当時から残っているステンドグラスもあるんですよ。ほら、あの天井近くの。昔のガラスだから、色が少し違うでしょ。
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ソガ
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本当だ!
色合いになんだか味がありますね。
花のデザインも可愛い。
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信者さん
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昔のガラスは手作りだから、少しゆがみがあって、でもそこがいい味になっているんですよ。
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平田さん
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私、ステンドグラスから差し込む光が大好きなんですよね。晴れた日や曇りの日、時間によっても色が変わって。ステンドグラスを通すことで、より自然を意識します。ずっと眺めていたいですね。
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ソガ
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その感覚って、今のお仕事にもつながっているんですか?
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平田さん
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そうですね、昔から自然が持つ豊かな色彩が好きで。そこから藍染に行き着いたのかもしれないです。
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ソガ
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なるほど、大刀洗の自然に平田さんのルーツがあるんですね。
教会について詳しく説明いただいた信者さんに別れを告げ、周辺を散策することに。
平田さんに先導いただき、着いたのは魚屋さん。
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平田さん
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昔から行きつけの鮮魚店「中原鮮魚店」さんです。
私の初めてのおつかいはここでした。
あ、おいちゃんとおばちゃんがいた。
こんにちは〜!
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中原鮮魚店さん
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こんにちは。
ああ、平田さんとこの娘さんやね。
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ソガ
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鯛にアジ、イカもおいしそうですね。
大刀洗はあんまり魚のイメージがないけど、ここは魚好きにはたまりません!
あれ?クチソコ?
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中原鮮魚店さん
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クチソコは有明海の魚。
大刀洗は、玄界灘からも有明海からも近いから、いろんな魚が集まるとよ。
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平田さん
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私も昔からいろんな魚を食べて育ちました。
魚は一匹をさばいてくれるから楽ですよね。
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ソガ
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大将と女将さんの手さばき、無駄がなくて早い。
あっという間ですね。
あと、ご夫婦並んでさばいていらっしゃるのも、何だか微笑ましい。
撮影に照れながらも、親切に大刀洗のお魚情報を教えてくれました。
中原鮮魚店を出て、住宅街の路地裏に。
昔ながらの住人も多く、情緒たっぷりな街角。
元気な小学生に追い抜かれながら、テクテク。
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ソガ
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この辺りは平田さんの通学路だったんですか?
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平田さん
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はい。
昔ながらの古い家があったり、川のザリガニを釣ったり、学校帰りは冒険してましたね。
友達と竹やぶのタケノコを全部掘ってしまって、こっぴどく叱られました(笑)
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ソガ
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そんなワンパクな!
意外にガキ大将だったんですね。
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平田さん
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うふふ。あ、ここトトロの家みたいでしょ。
それからここは、戦没者の慰霊碑ですね。
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ソガ
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慰霊碑なんですね。
ここもレンガが使われています。
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平田さん
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今村カトリック教会が建つ前、江戸時代からこの辺りに隠れキリシタンの人たちが暮らしていたそうです。
その名残でしょうか。
二人ともに童心を取り戻したのか、抜け道に入ってみたり、猫を追いかけてみたり…。
路地を抜けると、平田商店さんへ。
軒先には新鮮な野菜やフルーツがずらり。
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平田さん
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ここも昔からの行きつけ。
お菓子から食料品、雑貨まで何でもそろう「平田商店」さん。
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ソガ
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本当に商品がたくさん並んでますね。
あ、駄菓子がいっぱい!
よっちゃんイカとか昔ながらのお菓子もあれば、今風のガムやキャンディーも。
大人買いしちゃおう!
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平田さん
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テンション上がりますよね!
水飴は必ず買ってました。
この辺の棚は100円ゾーンなのでとっておきの時ですね。
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ソガ
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さすが元ガキ大将(笑)
手慣れたものです。
今日は女将さんと大女将さんがお店番。
おっとりとした優しい眼差しはまさに「おふくろさん」。
和みます。
年季が入った店内。
謎の民芸品や昭和のレトロな棚もさりげなく置かれていて、
昭和にタイムスリップしたみたい。
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平田商店さん
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今は、木村屋のパンや久留米の亀鶴堂の芋饅頭なんかも人気です。昔は豆腐も作っていたんですよ。
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平田さん
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昔から近所のおいちゃん達が集まってましたね。
奥に厨房もあるから近所のイベントでは、おばちゃんがここで炊き出しの準備をしてました。
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ソガ
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近所の皆さんの憩いの場ですね。
今でもこんなお店があるって、いいな。
訪問時もご近所さんの出入りが頻繁に。地元の方の寄り合い場になっていました。