二人で旅する2リズム


2 RHYTHM

子どもと一緒にどこ行こう?大刀洗の景色に眠るものがたりを探して 前編

夏休みも残りわずかとなった8月下旬。
大刀洗キッズは、宿題に、お稽古に、遊びにと忙しい毎日(!?)を過ごしているよう。
そこで、今回は大刀洗の小学生・中村こうせい君の1日に密着して、子どもの目線で大刀洗の魅力を探ります。
こうせい君のお供は、今年パパになったばかりという榊さん。
謎めいた神社に、広々とした田園地帯、ワクワクの夏祭りまで、大人たちにとってはちょっぴり懐かしくなる夏の終わりの冒険へ。
いざ、出発です!

案内する人

中村こうせいくん

生まれも育ちも大刀洗の小学4年生。おじいちゃんとおばあちゃん、パパママと兄妹人の8人家族で賑やかに暮らしています。休日は、友達とゲームしたり、地元の活動に参加したり、習字のお稽古も頑張っているそう。夏休みの宿題はまだ終わっていないそうですが、だ、大丈夫かな!?

案内される人

新米パパ 榊さん

今年生まれた女の子を子育て中。今日はお父さん役として参加したものの、自然いっぱいの大刀洗で遊ぶうちに、すっかり少年の心を取り戻したよう。こうせい君と一緒に野山を駆け巡ります。

14:30

こうせい君をお迎えに中村家へ。広々とした敷地には、おじいちゃんが丹精込めて育てている野菜畑や大きなクリの木などが茂り、のんびりとした雰囲気です。愛犬のパールも元気いっぱいにお出迎え。初対面の榊さんにちょっと緊張しつつ、こうせい君が周辺をぐるりと案内してくれました。だんだん打ち解けてきたところで、作戦会議。さて、今日はどこへ行こう?

 

14:30

榊さん

こうせい君の遊び場に行きたいんだけど、普段は何して遊んでいるの?

こうせい君

畑のところでチャンバラとか。
後は、あそこの神社で遊んでる。

榊さん

木のトンネルはトトロが出てきそうな感じ。
甲条神社っていうんだね。
立派な神社だ。

甲条神社とは
大日孁尊(おおひるめむちのみこと)大己貴命(おおなむちのみこと) など5柱を祀る神社。(福岡県神社誌.中巻参照)
境内一帯から弥生時代の 甕棺墓などが発見された事も。出土した副葬品にはガラス製の小玉や碧玉製の管玉など珍しいものもあったそう。

こうせい君

ここで弟が生まれた時にみんなで写真撮ったよ。
お父さんが子どもの時はここの崖を登りよったらしい。
あきちゃん(妹)がこの看板が怖いって。

こうせい君が指差した先には、この神社の境内に設置された遺跡を紹介する看板が。
その中に、甕棺墓から出てきた人骨も載っています。
確かに子どもにとってはちょっとドキッとする写真かも。

榊さん

昔の人のお墓の跡で、すごく歴史がある場所なんだね。

神社は小高い丘の上に建っていて、そよそよと風が通り抜ける境内の向こうには、
青々とした田んぼが一面に広がっています。
せっかくなので、手水所で手を洗って、神様にもご挨拶。
二人で参拝する事にしました。

榊さん

ここは狛犬がたくさんあるね。
本殿の前に立派な狛犬が6体もある。

こうせい君

この玉、なんだと思う?
動くとよ。
でも口から出そうと思っても出んね。

狛犬が口にくわえていた玉を指差すこうせい君。
さすが、目の付け所が違います。
その後、ブレイブボードを抱えた妹のあきちゃんが合流。
坂をボードで降ったり、境内でセミを捕ったり、ままごとをしたり。
地元の神社全てが子どもたちの遊び場なんです。

続いては、こうせい君が通っている本郷小学校の前にある陣屋川へ。
ここでは地域のボランティアの人が、陣屋川への美化活動のため鯉を放流しているそう。
こうせい君をはじめ、本郷小学校の生徒さんはいつも鯉の餌やりを手伝っているんだとか。

 

陣屋川への道中、話はこうせい君の学校生活についての話題で盛り上がりました。

榊さん

こうせい君の学年はクラスメイトが何人くらいおると?

こうせい君

40人くらい。
給食は、1年生から6年生まで全部の学年で一緒に食べるよ。
昼休みも他の学年と一緒になってサッカーして遊ぶ。

榊さん

5年生は強いやろ。
手加減してくれると?

こうせい君

いや、本気で向かってくる。
でも1回勝ったことあるよ。

学年を問わず、仲がいいのも大刀洗キッズの特徴なのかも。
歩きながら話していたら、いつもお菓子を買いに通っている「境新文堂書店」を発見!
ちょっと寄り道してみましょう!

境新文堂書店
戦前に、行灯の油を扱う店としてスタート。教科書や体操服などの学校用品から、駄菓子や書籍などまで幅広く取り扱っています。登校時間ギリギリに思い出しても購入できるよう朝7時に開店してくれる、子どもと保護者の強い味方なんです。

こうせい君

こんにちは〜!

境さん

はい、こんにちは。
今日はお菓子を買いに来たとね。

こうせい君

そうです。

榊さん

こんにちは!
こちらはいろんな商品を扱っていらっしゃるんですね。

境さん

給食のエプロンや体操服も扱っています。
最近は田舎でもこういったお店は減ってきましたからね。
周辺には、だんだん駄菓子を買うお店が減ってきて、本屋が無いんですよ。

榊さん

地元の皆さんの要望でお店をやってらっしゃるみたいな。

境さん

そうですね。
子どもが100円玉を握りしめて通うお店になればと思って。
昔の駄菓子屋は社会の縮図みたいなもので、店番のおばちゃんって、子ども同士のコミュニケーションを教えて、しつけてくれる役割があったんです。今はそんな場所がどんどん減っているから、うちでは頑張っています。

個人向けの商品の他にも、学校教材の問屋も兼ねているそう。
お店は100年以上もの歴史を持つ建物で、中には坪庭を設えた日本家屋も素敵。
しかも、境さんは、東大寺で修業したお坊さんの免許も持っているそうです。
子どもを見守る優しい眼差しは、まるでお地蔵さんのよう。

「境新文堂書店」を後にした一行は、生垣に囲まれた迷路のような裏道をたどって、
本郷小学校前を流れる陣屋川へ到着。

 

筑後川を流れる支流、陣屋川。
平成6年には、ボランティアグループ「陣屋川を守る会」が発足。
約160人の会員が、周辺の草刈りやごみ拾いに加え、小学生と一緒に錦鯉を放流するなどの環境学習にも取り組んでいます。
毎朝鯉の餌やりに合わせて、あいさつ運動も実施しているので、子どもたちにもすっかりおなじみ。
こうせい君はこの川を通るたびに鯉の様子を気にかけているそうです。

榊さん

陣屋川にかかる橋の上に、白いカゴが設置してあるね。
これはなんだろう。

こうせい君

いつもはここにパンが入っているとよ。
「陣屋川を守る会」のおじちゃんたちが、近所にあるお菓子屋さんの「ふなき」さんからパンをもらってきてくれて置いてくれてる。

※今回はエサが無かったため「境新文堂書店」で購入したカンパンをエサにしました。

榊さん

へえ。
道を通る人がエサをあげられるようになっているんやね。

こうせい君

うんそうよー

榊さん

じゃあ僕たちもエサをやってみようかね。

・・・

わわ!
いっぱいきた!

こうせい君

わー!

エサをまいてからしばらく経つと、どこからともなく鯉の大群が!
体長40〜60cmはあろうかという大きな鯉が次々にエサを吸い込む様子は迫力満点!
どの鯉もツヤツヤしていて健康そう。

こうせい君

授業でね、陣屋川の事を勉強して、発表すると。
それでね、俳句を思いついた。

榊さん

俳句!?
聞かせてよ!

こうせい君

「こいさんは きれいな川に してくれる」
陣屋川は昔は少し汚れとったけど、鯉を入れてからゴミを食べてくれるんだって。

榊さん

なるほど!
鯉の良いところが出とるね。
こうせい君、俳句の才能あるっちゃない。

こうせい君

俳句は好きと。
いろんな事を思いついて言ってみたら、五七五になっとうけん。

エサを求めて元気いっぱいに跳ね回る鯉を眺めながら、
こうせい君と榊さんの会話も弾んでいるよう。
餌やりは、ボランティアの人や友達、家族とのコミュニケーションも
グッと深めてくれるチャンスなのかもしれません。

子どもたちにとっての大刀洗は、生活の場であるだけではなく、大事な遊び場であり、学びの場。
そして、その中には、子どもを見守る地域の人たちの優しい思いが息づいています。
毎日を目いっぱい楽しみながら過ごす事が、地域への恩返しになるのかもしれません。
さて、遊んでばかりもいられません。
こうせい君には夏休みの宿題と習字のお稽古が待っています。
榊さんと一緒に、お勉強のお時間ですよ〜!

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